2008年10月29日水曜日

第2章 接頭辞「お」―おみかんのおはくえない

現在、いろんな言葉に『お』を付けているようだ。

例えば「お油揚げ」、「お絵本」、「お海」など、

異なる母音がふたつ連続している重母音で発音しにくいと思われるものにも使われている。

また「お消しゴム」、「おこんばんは」、「おケータイ(お携帯)」など、

音節数の多い語に付けられることもある。

カタカナ語では、「おコーヒー」、「おジュース」、「おコピー」、「おフランス」などがある。

とくに料理の先生や接客業のひとたちが「お」を多用している様は「現代の女房ことば」といった観がある。



接頭辞の「お(御)」は、奈良時代の「おほ(大)+み(御)」からきている。

「おほ」も「み」もともに尊称・美称の接頭辞で最大級の敬意を表す。


女房ことばを使用した女房たちは、江戸時代になると幕府や大名の大奥の人(女中)となったので、

女房ことばは、武家や町家の子女まで普及していった。

「女中ことば」とも呼ばれるようになった。


「お」をよくつける女性に幼稚園教師がある。

「椅子」、「ピアノ」などにも「お」をつける。

さらに、接尾辞「さん」を付けて「お椅子さん」、「おピアノさん」などということもあるそうだ。

そこで、「そんなに乱暴に叩くと、おピアノさんが痛い痛いって泣きますよ」などということにもなるわけだ。


どの語に「お」を付けてよくて、どの語に「お」を付けてはいけない、ということはないはずである。

一般には、外来語、「お」で始まる語、色や自然に関する語、長い音節の語、悪感情の語には「お」が付きにくいといわれている。

「おしぼり」、「おしろい」、「おなか」、「おにぎり」、「おふくろ」などは、

「お」があるのとないのでは意味がまったく異なってしまう。


女性の「お」の使用は、物事を婉曲に上品にやさしく表現しようとする女性特有の心情に根ざすものである。

贈り物でも美しい包装をしてあるところに贈り主の真心も表現される。

しかし、過剰包装になってしまうと、これはもうその人のセンスとしかいいようがない。



【出典】
pp.51~66
署名 『日本語の女ことば』
著者 高橋巌
出版年 2002年
出版社 高文堂出版社

2 件のコメント:

m_yam さんのコメント...

「そんなに乱暴に叩くと、おピアノさんが痛い痛いって泣きますよ」は・・・どうですかねぇ?

せめて「ピアノさん」でとめてほしいです。

でも、ここまでの例があるとなると、実態調査は面白いかも。

m_yam さんのコメント...

具合はどうですかね?復活しました?